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活用事例

ゆっくりじっくり。地域の人と共に育てるゲストハウス

近鉄生駒線の南生駒駅から徒歩3分。踏切を渡った先に、ひっそりとnatomi宿は佇んでいます。暖簾のかかる引き戸から「こんにちは」と声をかけると、奈緒さん・美緒さん姉妹が「いらっしゃい」と出迎えてくれました。恋文不動産での活用が決まって1年6ヶ月。まちの人の憩いの場になりつつあるという話を聞き、改めて、事業に対するふたりの想いを聞きました。

natomi宿プロフィール
上津原奈緒さん、江波美緒さんの姉妹によって運営されるゲストハウス。旅人もまちの人も、暮らすように過ごしてほしいと願って2025年4月にオープン。
元鍛冶屋だったという築86年の家の持ち主は、下西啓次さん。地域の交流の場になることを願って、恋文不動産を通して借り手を募集し、物件見学会・プレ出店イベント・マッチングパーティーでのプレゼンテーションを経て、活用者が決定。

早期退職を機に、長年の夢にチャレンジ

まずはゲストハウスを始めるまでの経緯を教えてください。

奈緒さん:姉の私は、公立学校の事務職員として28年間、生駒市・奈良市の小中学校に勤めていました。結婚を機に生駒に住み始め、20年ほどになります。妹の美緒は、大阪の吹田市に住んでいます。ふたりでゲストハウスをしたいという夢があったので、広報「いこまち」の恋文不動産のコーナーを見かけ物件見学会に軽い気持ちで申し込みをしました。
あまりにも素敵な物件だったので、退職の予定はまだ先のつもりだったのですが、事業に取り組むために早期退職をしました。
活用者として選んでいただいてから、開業までの間に、それぞれゲストハウスに見習いに行き、ゲストハウス運営や、清掃、インテリアなど具体的な仕事を学びました。

こちらの物件に惹かれた理由は何でしょうか?

美緒さん:私たちが大事にしていた条件に、「駅から近いこと」がありました。田舎に建てるこだわりの宿というより、色々な人に来てもらえる場所にしたかったんです。この家は駅から3分で、隠れているけど行きやすい。近くにはノスタルジックな踏切があり、家並みにも歴史を感じて、気に入りました。姉は自宅から電車で2駅ですし、私も車で通いやすいので、選んで良かったなと思っています。

「また行きたい場所」にするために

リノベーションはどのように進めましたか?

奈緒さん:設計は、素敵な物件をいくつも手掛けていた建築士さんにお願いしました。その方が、「地域の人々の力を借りて夢を実現することが大切」と言っていたので、共同施工という形で、リノベーションに参加してくれる人を募集しました。正直「誰も来ないだろう」と思っていたのですが、実際はたくさん集まってくださって、私たちはまかないを作るのが当日の最大のミッション(笑)。中学生も参加してくれたんですよ。作業の仕方に人の個性が見え隠れするのも楽しかったし、オープン前から、私たちのことを知ってもらえました。関わってくださった皆さんに、この家への愛着を感じてもらえたら嬉しいです。

オープンしてからの活用方法を教えてください。

美緒さん:ゲストハウスは現在は定休日なく毎日営業しています。また、金曜日と土曜日の夜は居酒屋、土曜日にはランチを提供しています。昼間は和室やギャラリースペースのレンタルが可能で、これまで、ヨガ教室・写真教室・お茶会・ママ友の会などに活用されました。レンタルスペースはあまり知られていないので、今後、サイトに掲載して広めていくことを検討中。おしゃれで敷居が高い雰囲気ではなく、どんな方も気軽に使える、地域の寄合所みたいな場を目指そうと思います。

今後のことになりますが、日曜日の昼間にカフェとして間借りしてくれる、良いご縁があれば嬉しいですね。私たちの想いに共感して活動してほしいので、まだ広く募集はしていませんが、この場所で頑張っている人を応援したいです。

この日はレンタルスペースでワインの会が行われていました

これまで、お客様との印象的な出来事はありましたか?

奈緒さん:最も記憶に残っているのは、日本建築を学んでいるというハンガリーの方ですね。最初のお客様で、4日間の滞在中に誕生日を迎えたので、カップケーキを用意してささやかなお祝いをしました。居酒屋の時間に他のお客様と交流したり、縁側でゆったりコーヒーを飲んでいる姿が印象的で、「こういう場所にしたかった」という光景が見られた瞬間でした。

中国から新婚旅行で来られた方もよく覚えています。男性2人、女性1人のグループでしたが、宿泊者に書いて頂く「旅ノート」で、新郎新婦と、新婦の弟だったことが分かりました。萩の台まで歩いてCafe風風さんを訪れたり、まちの楽しみ方が素敵だなと思いました。
他にも、家族で来られた中学生の娘さんが「とても幸せでした」「これからも『また行きたい』と思ってもらえるnatomi宿であり続けてください、応援しています!」と書き残してくれたことも。旅ノートに残されたたくさんの言葉は、私たちの宝物です。

地域の人と居場所を育てる

家主の下西さんとはどのような関係を築かれていますか?

美緒さん:あたたかく接してくださるので、とてもありがたいです。恋文不動産のマッチングのあと、仲介業者さんが中立な立場で、賃貸借契約の条件を調整してくれました。私たちにとってやりやすい内容だったので、下西さんには、かなり寄り添ってもらったと感じました。下西さんはこの近くに畑を持っていて、農作業の際に立ち寄られるなど、今も継続的に会っています。知り合いや親戚を連れて訪問されたりもするんですよ。普通の賃貸では、家主と顔を合わせることは少ないですよね。でも私たちはお会いして、この家での思い出などを聞かせてもらえます。関わりの深さと共にどんどん家に愛着が湧いて、それをお客様に伝えることができる。下西さんも「家が喜んでいる」と仰っていました。

下西さんご夫婦と

地域の方とはどのように関わっていますか?

奈緒さん:ここには10軒くらい集まる隣組という制度があるのですが、オープン前日にその寄合に呼んで頂き、ご近所の皆さんに挨拶しました。そこで初めて、私たちがやろうとしていることを直接説明したんです。そこから仲良くなって、オープンイベントで頂いた花をお裾分けしたりしました。今では、野菜を頂いたり、宿で出すおばんざいを届けたりする関係になっています。「空き家だったところに明かりが灯って安心」と言ってもらえたり、居酒屋営業に足を運んでもらえるようになって、嬉しいですね。私たちも出来るだけ役に立ちたいと思って、自治会の草刈り作業などにも参加します。リノベーションのコンセプトが「居場所を育てる」だったので、じわじわと地域に馴染んで、末永く愛される場としてnatomi宿を育てていけたらと思います。

最後に、生駒市内の家主の皆さんへメッセージをお願い致します。

美緒さん:私たちは、貸してくださった下西さんのおかげで夢を叶え、一歩を踏み出せました。場所や物件との出会いは、夢を持つ人にとって、とても大切なきっかけになります。恋文不動産は、人と人のご縁を繋ぐための仕組みです。私たちは家主さんの想いを大切にしたいと思っていますし、きっと、家主さんの望む形で家を活用してくれる人がいると思います。貸すこと、借りることで、このまちに新たな楽しみや喜びが生まれていったらいいですね。